計算物性物理

計算物性物理は、コンピュータを用いて物質の性質を明らかにする物理学の一部門である。物質の性質は、物質がどのような原子でできているか、そしてそれら原子がどのように並んで物質を形作るか、すなわち物質の原子構造にその根元がある。そこで物質の構造を扱うのに優れた計算物性物理の手法である第一原理計算を用いて物質の原子構造、特にその構造変化に関わる研究を行っている。また第一原理計算の技術を活用して各種の共同研究を行ってきた。

以下に研究履歴の概略をまとめた図を示す。研究の基幹技術は第一原理計算とマルチカノニカル法である。そこから、三分野(格子モデル、物質構造形成・相変化、表面科学への応用を行ってきている。
research history


研究ハイライト

  • マルチオーダー・マルチサーマル法によるシリコンのシミュレーション
    シリコンの融解・結晶化の性質をマルチカノニカル法の一種を開発して調べている。シリコンが液体状態と結晶状態の間を行き来している。通常の温度一定の分子動力学ではこのようなことは困難で一度溶けると完全な結晶にはなかなか戻らない。
    このシミュレーションは実は仮想的なもので対応する温度はない。それでもシリコンの熱力学がすべて入っており”reweighting”によって、任意の温度の物理をこの単一のシミュレーション結果から再構成できる。しかも系の緩和時間が短縮されているのでシミュレーションが高速化される。

    YY, JCP 125, 184103 (2006)

  • 窒素原子を吸着した銅表面の第一原理計算
    銅表面に窒素原子を吸着させると、窒素原子は銅表面上で規則正しく整列していわば表面化合物を作る。そのSTM像のシミュレーションを第一原理計算によって行った。
    緑色の銅原子核と赤色の窒素原子核の回りの電子の分布が青色の等高面で、その上方にシミュレートされた走査型トンネル顕微鏡像が黄色で示されている。VsはSTMのサンプルバイアス[V]、zは表面をシミュレートしたスラブの中央からのtipの高さ[Angstrom]
    cu001c2x2n
    YY, S. Tsuneyuki, Surf. Sci. 514, 200 (2002)

論文リスト

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